「管理職は罰ゲーム」を、AIで終わらせにいった話
「管理職は罰ゲーム」——正直、わかる
「管理職の罰ゲーム化」という言葉が、2025〜2026年の人事トレンドワードに選ばれました。
正直、最初に見たとき「わかる」と思ってしまいました。
僕は20代で大企業の部長に抜擢され、50名規模の組織を管掌しています。新規事業の立ち上げからグロースまで見ながら、日々のマネジメント業務もこなす。加えて副業で複数の事業も運営しています。
管理職の日常って、こんな感じです。
- 朝イチで未読メール・チャット50件を処理
- 午前中は会議が2〜3本
- 合間に承認・レビュー対応
- 午後も会議、1on1が週に何本も
- 夕方にやっと「自分の仕事」に着手
- 夜に翌日の会議資料を準備
これを毎日繰り返していると、「自分がやるべき仕事」と「こなすだけの作業」の境界が曖昧になってきます。
「これ、全部自分がやる必要あるのか?」
そう思ったのが、AIを本格的にマネジメント業務に取り入れたきっかけでした。
管理職の仕事を棚卸ししたら、半分は「作業」だった
まず、自分の1週間の業務をすべて書き出してみました。そして、それぞれを2つに分類しました。
「判断が必要な仕事」と「作業」。
| 判断が必要 | 作業(AIに移管可能) |
|---|---|
| メンバーの評価・フィードバック | 会議の議事録作成 |
| チームの方針決定 | 定例レポートの下書き |
| 1on1での対話・コーチング | 会議アジェンダの整理 |
| 採用の最終判断 | データの集計・可視化 |
| ステークホルダーとの交渉 | メール・チャットの下書き |
| 予算配分の意思決定 | 情報収集・リサーチ |
書き出して気づいたのは、業務時間の約半分が「作業」に分類されたということ。
判断が必要な仕事に集中するためには、作業をどれだけ減らせるかが勝負。ここにAIを投入しました。
実践① 会議準備・議事録をAIに任せる
管理職の時間を最も食うのが「会議」です。会議そのものだけでなく、準備と後処理に時間がかかる。
Before:
- 会議前に過去の議事録を読み返し、アジェンダを整理(15分)
- 会議中にメモを取りながら議論に参加
- 会議後に議事録をまとめ、関係者に共有(20分)
- 1回の会議あたり、会議時間+35分の付帯作業
After:
- AIに過去の議事録と今回の目的を渡し、アジェンダ案を生成(2分でレビュー)
- 会議はAI議事録ツールで自動記録。僕は議論に集中
- 会議後、AIが構造化した議事録ドラフトを確認・修正(5分)
- 1回あたりの付帯作業が35分→7分に
週に10本の会議があるとすると、週あたり約4.5時間の削減。月にすると18時間。これだけで丸2日分以上の時間が生まれました。
うちの会社では Microsoft Teamsの議事録機能 が全社展開されていて、導入のハードル自体はほぼゼロでした。ボタンひとつで録画・文字起こし・要約が出てくる。
ただ、地味に面倒なのが2つ。
毎回「録画ボタン」を押し忘れる問題。 会議が始まるとすぐ議論に入ってしまい、「あ、録画してなかった」となることが何度もありました。今はカレンダーの会議招待に「録画ON」とメモを入れて対策しています。
もう一つは、議事録を放置すると消えてしまう問題。 Teamsの文字起こしデータは一定期間で消えるので、必要なものはその日のうちにコピーして残すようにしています。ここは正直、まだ手動で面倒。自動保存の仕組みを作りたいと思いつつ、後回しになっています。
次に試したいこと: 1on1の事前準備をAIと壁打ち
正直に書くと、1on1へのAI活用はまだできていません。でも、次にやりたいのはここです。
50名の組織だと直属のメンバーだけでも複数人との1on1が毎週あり、全員の状況を頭に入れておくのは正直しんどい。
やりたいと思っているのはこういうこと:
- 事前整理: 前回の1on1メモ、最近のチャットでのやり取り、プロジェクトの進捗をAIに渡して「このメンバーの現在の状況を整理して」と依頼
- 質問案の生成: 「前回○○について悩んでいたが、今回聞くべきことは?」とAIに壁打ち
- フィードバックの言語化: 伝えたいことはあるけど言葉にしづらいとき、AIに「こういう状況で、こう伝えたい」と相談して表現を練る
ポイントは、AIに1on1をさせるのではなく、1on1の「準備」にAIを使うこと。
1on1本番は100%人間同士の対話。でも、準備の質が上がれば、対話の質も上がるはず。
今の僕の1on1は「今週どうだった?」という漠然とした質問から始まりがちです。これが「先週のA案件、クライアントとの調整で苦労してたと思うけど、その後どう?」と具体的な話から入れるようになったら、メンバーの体験はだいぶ変わるんじゃないかと思っています。
実際に試したら、またこのブログで報告します。
実践③ レポート・資料作成の自動化
管理職は「上への報告」と「横への共有」に大量の資料を作ります。
- 週次の進捗レポート
- 月次の部門報告資料
- 経営会議用のサマリー
これらの大半は「フォーマットが決まっていて、データを集めて埋める」タイプの作業。まさにAIの得意領域です。
実践している流れ:
- 各プロジェクトの進捗データをAIに読み込ませる
- 「前回のレポートと比較して、変化点を要約して」と指示
- AIが生成したドラフトをレビューし、自分の所感や判断を加筆
- 最終版を共有
定例レポートの作成時間が1本あたり60分→15分になりました。
ただし、ここで重要なのは「AIが書いたまま出さない」こと。データの要約はAIに任せますが、「だからどうするのか」という判断と意思決定は必ず自分の言葉で書くようにしています。
レポートは「報告」ではなく「意思表示」。その部分を省略したら、管理職の存在意義がなくなります。
「罰ゲーム」が「戦略ゲーム」に変わった
AIに作業を移管して生まれた時間で、何をするようになったか。
メンバーとの対話の質を上げること。
以前は1on1の時間を確保するだけで精一杯だったのが、今は1on1の「中身」に集中できるようになりました。
- メンバーの育成に、じっくり向き合う時間ができた
- チーム全体のデータを分析する余裕が生まれた
- 自分自身のやりがいについて考える「余白」ができた
具体的には、作業に追われていた頃は後回しにしがちだった「メンバーの中長期的な成長」について考える時間が増えました。目の前のタスクをこなすためのマネジメントから、半年後・1年後のチームを見据えたマネジメントへ。
データ分析も同じです。以前は「レポートを作る」で精一杯だったのが、数字をじっくり眺めて「なぜこうなっているのか」を考え、次の打ち手を設計する時間に変わりました。
「管理職は罰ゲーム」と感じていた最大の原因は、やるべきことが多すぎて、本当にやりたいことに手が回らなかったから。
AIで作業を圧縮した結果、管理職の仕事が「こなすもの」から「設計するもの」に変わりました。
誰に何を任せるか。チームをどこに向かわせるか。メンバーの強みをどう活かすか。
これが管理職の本質であり、一番おもしろい部分だと思っています。
AI時代の管理職は「やらないことを決められる人」
最後にまとめます。
管理職の仕事がしんどいのは、仕事の難易度が高いからではなく、「判断」と「作業」が混在したまま、全部自分でやろうとしているから。
AIは、その「作業」の部分を引き受けてくれる存在です。
僕がやったのは、特別なことではありません。
- 棚卸し: 自分の業務を「判断」と「作業」に分ける
- 移管: 「作業」をAIに任せる仕組みを作る
- 集中: 空いた時間を「人」に向ける
AIで効率化した時間を、さらに別の作業で埋めてしまったら意味がない。「やらないこと」を決めて、人にしかできないことに集中する。
それが、AI時代の管理職に求められる最大のスキルだと感じています。
「管理職は罰ゲーム」。そう感じている人がいたら、まずは1週間の業務を棚卸しするところから始めてみてください。たぶん、半分は手放せます。
手放した先に見えるのは、「人の成長に関われる」という管理職ならではのやりがいだと思います。