2026-03-22Management

「管理職は罰ゲーム」を、AIで終わらせにいった話

「管理職は罰ゲーム」——正直、わかる

「管理職の罰ゲーム化」という言葉が、2025〜2026年の人事トレンドワードに選ばれました。

正直、最初に見たとき「わかる」と思ってしまいました。

僕は20代で大企業の部長に抜擢され、50名規模の組織を管掌しています。新規事業の立ち上げからグロースまで見ながら、日々のマネジメント業務もこなす。加えて副業で複数の事業も運営しています。

管理職の日常って、こんな感じです。

  • 朝イチで未読メール・チャット50件を処理
  • 午前中は会議が2〜3本
  • 合間に承認・レビュー対応
  • 午後も会議、1on1が週に何本も
  • 夕方にやっと「自分の仕事」に着手
  • 夜に翌日の会議資料を準備

これを毎日繰り返していると、「自分がやるべき仕事」と「こなすだけの作業」の境界が曖昧になってきます。

「これ、全部自分がやる必要あるのか?」

そう思ったのが、AIを本格的にマネジメント業務に取り入れたきっかけでした。


管理職の仕事を棚卸ししたら、半分は「作業」だった

まず、自分の1週間の業務をすべて書き出してみました。そして、それぞれを2つに分類しました。

「判断が必要な仕事」と「作業」。

判断が必要作業(AIに移管可能)
メンバーの評価・フィードバック会議の議事録作成
チームの方針決定定例レポートの下書き
1on1での対話・コーチング会議アジェンダの整理
採用の最終判断データの集計・可視化
ステークホルダーとの交渉メール・チャットの下書き
予算配分の意思決定情報収集・リサーチ

書き出して気づいたのは、業務時間の約半分が「作業」に分類されたということ。

判断が必要な仕事に集中するためには、作業をどれだけ減らせるかが勝負。ここにAIを投入しました。


実践① 会議準備・議事録をAIに任せる

管理職の時間を最も食うのが「会議」です。会議そのものだけでなく、準備と後処理に時間がかかる。

Before:

  • 会議前に過去の議事録を読み返し、アジェンダを整理(15分)
  • 会議中にメモを取りながら議論に参加
  • 会議後に議事録をまとめ、関係者に共有(20分)
  • 1回の会議あたり、会議時間+35分の付帯作業

After:

  • AIに過去の議事録と今回の目的を渡し、アジェンダ案を生成(2分でレビュー)
  • 会議はAI議事録ツールで自動記録。僕は議論に集中
  • 会議後、AIが構造化した議事録ドラフトを確認・修正(5分)
  • 1回あたりの付帯作業が35分→7分に

週に10本の会議があるとすると、週あたり約4.5時間の削減。月にすると18時間。これだけで丸2日分以上の時間が生まれました。

うちの会社では Microsoft Teamsの議事録機能 が全社展開されていて、導入のハードル自体はほぼゼロでした。ボタンひとつで録画・文字起こし・要約が出てくる。

ただ、地味に面倒なのが2つ。

毎回「録画ボタン」を押し忘れる問題。 会議が始まるとすぐ議論に入ってしまい、「あ、録画してなかった」となることが何度もありました。今はカレンダーの会議招待に「録画ON」とメモを入れて対策しています。

もう一つは、議事録を放置すると消えてしまう問題。 Teamsの文字起こしデータは一定期間で消えるので、必要なものはその日のうちにコピーして残すようにしています。ここは正直、まだ手動で面倒。自動保存の仕組みを作りたいと思いつつ、後回しになっています。


次に試したいこと: 1on1の事前準備をAIと壁打ち

正直に書くと、1on1へのAI活用はまだできていません。でも、次にやりたいのはここです。

50名の組織だと直属のメンバーだけでも複数人との1on1が毎週あり、全員の状況を頭に入れておくのは正直しんどい。

やりたいと思っているのはこういうこと:

  1. 事前整理: 前回の1on1メモ、最近のチャットでのやり取り、プロジェクトの進捗をAIに渡して「このメンバーの現在の状況を整理して」と依頼
  2. 質問案の生成: 「前回○○について悩んでいたが、今回聞くべきことは?」とAIに壁打ち
  3. フィードバックの言語化: 伝えたいことはあるけど言葉にしづらいとき、AIに「こういう状況で、こう伝えたい」と相談して表現を練る

ポイントは、AIに1on1をさせるのではなく、1on1の「準備」にAIを使うこと。

1on1本番は100%人間同士の対話。でも、準備の質が上がれば、対話の質も上がるはず。

今の僕の1on1は「今週どうだった?」という漠然とした質問から始まりがちです。これが「先週のA案件、クライアントとの調整で苦労してたと思うけど、その後どう?」と具体的な話から入れるようになったら、メンバーの体験はだいぶ変わるんじゃないかと思っています。

実際に試したら、またこのブログで報告します。


実践③ レポート・資料作成の自動化

管理職は「上への報告」と「横への共有」に大量の資料を作ります。

  • 週次の進捗レポート
  • 月次の部門報告資料
  • 経営会議用のサマリー

これらの大半は「フォーマットが決まっていて、データを集めて埋める」タイプの作業。まさにAIの得意領域です。

実践している流れ:

  1. 各プロジェクトの進捗データをAIに読み込ませる
  2. 「前回のレポートと比較して、変化点を要約して」と指示
  3. AIが生成したドラフトをレビューし、自分の所感や判断を加筆
  4. 最終版を共有

定例レポートの作成時間が1本あたり60分→15分になりました。

ただし、ここで重要なのは「AIが書いたまま出さない」こと。データの要約はAIに任せますが、「だからどうするのか」という判断と意思決定は必ず自分の言葉で書くようにしています。

レポートは「報告」ではなく「意思表示」。その部分を省略したら、管理職の存在意義がなくなります。


「罰ゲーム」が「戦略ゲーム」に変わった

AIに作業を移管して生まれた時間で、何をするようになったか。

メンバーとの対話の質を上げること。

以前は1on1の時間を確保するだけで精一杯だったのが、今は1on1の「中身」に集中できるようになりました。

  • メンバーの育成に、じっくり向き合う時間ができた
  • チーム全体のデータを分析する余裕が生まれた
  • 自分自身のやりがいについて考える「余白」ができた

具体的には、作業に追われていた頃は後回しにしがちだった「メンバーの中長期的な成長」について考える時間が増えました。目の前のタスクをこなすためのマネジメントから、半年後・1年後のチームを見据えたマネジメントへ。

データ分析も同じです。以前は「レポートを作る」で精一杯だったのが、数字をじっくり眺めて「なぜこうなっているのか」を考え、次の打ち手を設計する時間に変わりました。

「管理職は罰ゲーム」と感じていた最大の原因は、やるべきことが多すぎて、本当にやりたいことに手が回らなかったから。

AIで作業を圧縮した結果、管理職の仕事が「こなすもの」から「設計するもの」に変わりました。

誰に何を任せるか。チームをどこに向かわせるか。メンバーの強みをどう活かすか。

これが管理職の本質であり、一番おもしろい部分だと思っています。


AI時代の管理職は「やらないことを決められる人」

最後にまとめます。

管理職の仕事がしんどいのは、仕事の難易度が高いからではなく、「判断」と「作業」が混在したまま、全部自分でやろうとしているから。

AIは、その「作業」の部分を引き受けてくれる存在です。

僕がやったのは、特別なことではありません。

  1. 棚卸し: 自分の業務を「判断」と「作業」に分ける
  2. 移管: 「作業」をAIに任せる仕組みを作る
  3. 集中: 空いた時間を「人」に向ける

AIで効率化した時間を、さらに別の作業で埋めてしまったら意味がない。「やらないこと」を決めて、人にしかできないことに集中する。

それが、AI時代の管理職に求められる最大のスキルだと感じています。

「管理職は罰ゲーム」。そう感じている人がいたら、まずは1週間の業務を棚卸しするところから始めてみてください。たぶん、半分は手放せます。

手放した先に見えるのは、「人の成長に関われる」という管理職ならではのやりがいだと思います。